修善寺の「菊屋」さんのこと

2007年07月14日

日経新聞に、修善寺の老舗旅館「菊屋」さんの記事が掲載されていました。以下に、記事の要旨を記載します。

「菊屋」さんは、バブル崩壊後経営が悪化し、2005年に自主再建を断念しました。
その後、ビジネスホテル運営のノウハウを持っている共立メンテナンスが運営を引き継ぎ、伝統に変化を加えた再生プランでよみがえりました。

「菊屋」は夏目漱石が吐血した「修善寺の大患」の舞台になるなど、多くの文豪が訪れる由緒ある旅館でした。当時は、文豪に「新聞小説を書いてもらい、名前を売る、画期的な宣伝手法」をとっていました。(今流で言うと、メディアにパブリシティでどんどん取り上げてもらうマーケティング手法ですね。)

先人は桜並木等街づくりを行い、明治から大正にかけて、修善寺温泉を先進リゾート地に育てた。

ただし、その後は「過去の遺産を食い潰してきた」。

十五代目当主の野田治久さんは、25年前に、大学卒業後他の旅館修行を終えて戻ったが、「菊屋は自分でも泊まりたくない大変古臭い旅館」になっていた。

約一万三千平方メートルの敷地を観光センターなど温泉街の中核施設に変え、旅館は取り壊し近くに新築するという野田さんの大胆な構想に、母親らは「伝統を守れ」と猛反対

やむなく耐火工事などに四億を投じたが、客の目に付く改装は後手に回った。なじみ客は高齢化、新規顧客の開拓もままならず、バブル崩壊後は赤字経営。

自主再建断念のきっかけは、2004年10月の台風22号。ケヤキの大木が倒れ漱石ゆかりの部屋を壊すなど壊滅的被害を受けた。
年間一千万近くかかる庭木の手入れをおろそかにした「しっぺ返し」と映り、「手をかけられないなら終わりだ」と、覚悟を決めた。

台風後に、以前から旅館経営に関心あり、旅館運営受託の打診をされていた共立メンテナンスに直ちに連絡をとり、一ヶ月ほどで経営から身を引き、二十年契約で土地建物を賃貸に。

共立メンテナンスはさっそく数億円かけて大改装。壊れた部屋を露天風呂付き客室に変えたり、カーペットなど内装も一新。2006年7月に「湯回廊 菊屋」としてリニューアル開館。
部屋だしの食事をレストランに切り替え、共立メンテナンスが開発したシステムを使い、インターネットで集客。

それから一年。週末は満室続きで稼働率は65%に達し、今年の4月からは単月黒字に転換した。営業利益率は10%を確保。「利益で再投資するメドもついた」と新支配人。

ただ、「新しい客室で若年層は増えたが、基本は菊屋の伝統」であるとのこと。壁にかかる古い柱時計も廃止ではなく、顧客にどう価値を伝えるかを検討している。

新しい仕組みを加えて、伝統を生かす----

外部の力による旅館再生を目の当たりにした野田さんは、「温泉街再生にも外の力が必要だ」と痛感、外部資本を取り入れた遊休地活用などに奔走している。

修善寺温泉の宿泊客数は2005年度の54万人を底に、2006年度は57万人に回復。温泉街には福岡県からどら焼き店が出店するなど、「外資ブーム」を予感させる動きもある。


どうですか?皆さん。
このお話はいろいろ示唆に富んだ教訓を含んでいます。
もちろん、単なる旅館の再生ということでも大変勉強になるのですが、実は、今、この「経営と所有の分離」ということが、静岡県東部地区のどの市町村でも頭を抱えている「中心市街地の活性化」という問題に関しても、ソリューションの一つとして脚光を浴びつつあります。(財源確保の手法として、日本版BID(Bussiness Improvement District?)という手法も考えられ始めました。)

少し長くなってしまったので、そのお話はどこかで進めるとして、私がお話したいのは、市街地や各店舗、旅館等々、地域の活性化において、地域の発想・知識・ノウハウだけでは限界がある、ということです。
時代はどんどん変わってきています。伝統や、今までの考えにしがみついていても、問題解決には決してつながらない事例が多いということ。
外部の知恵・ノウハウ・資金を入れることに臆病になっていると、いつの間にか時代から大きく取り残され、内向きの発想に支配され、「動かないことがよいこと」=「ゆで蛙現象」になってしまいますよ、ということをお伝えしたいと思います。

ではまた。

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Posted by かっちゃん  at 17:24 │Comments(0)雑感

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智を以って就き、而して成就されたし。然れども肝要なるは朋なり。
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